近年、スーパーカー市場で存在感を増しているマクラーレン。卓越した性能と革新的なデザインで多くのファンを魅了する一方で、「リセールバリュー」という大きな課題を抱えています。今回は、この問題について車を愛している私が詳細に分析していきます。
スーパーカー市場におけるマクラーレンの立ち位置
マクラーレンは1963年にブルース・マクラーレンによって設立され、F1での輝かしい実績を持つレーシングチームとして知られています。1992年には伝説的なF1ロードカーを発表し、スーパーカーメーカーとしての第一歩を踏み出しました。(もっと知りたい方はこちらへ)
しかし、現代のマクラーレン・オートモーティブとしての本格的な量産は2010年以降です。フェラーリやランボルギーニと比較すると、量産メーカーとしての歴史は浅く、このことがブランドイメージに影響を与えている面は否めません。
現在の市場シェアは着実に拡大しており、特に新興市場での認知度は上昇傾向にあります。しかし、伝統的なスーパーカーメーカーと比べると、まだまだ発展途上だといえるでしょう。
リセールバリューを低下させる3つの主要因
急速なモデルチェンジサイクル
マクラーレンの特徴の一つが、非常に速いペースでの新モデル投入です。例えば、MP4-12Cから650S、さらに720Sへと、わずか3年で主力モデルが変更されています。この戦略は新車販売には効果的かもしれませんが、既存モデルの価値を急速に低下させる要因となっています。
メンテナンス面での課題
マクラーレンの整備には専門的な知識と設備が必要です。しかし、認定サービスセンターの数は限られており、特に日本国内では深刻な問題となっています。
また、部品の供給体制も十分とは言えず、修理に時間がかかるケースも少なくありません。
マクラーレンはフェラーリやランボルギーニなどの老舗スーパーカーブランドと比べると比較的新しいため、正規ディーラー以外の整備工場ではまだ整備できるところが限られています。
ブランド認知度の問題
一般消費者におけるマクラーレンの認知度は、フェラーリやランボルギーニと比べるとまだまだ低い状況です。これは中古市場での需要に直接影響を与える要因となっています。
ライバル比較:フェラーリ・ランボルギーニとの決定的な違い
フェラーリやランボルギーニの中古車価格は、多くの場合、新車価格の70-80%程度を維持します。特に限定モデルは新車価格を上回ることも珍しくありません。一方、マクラーレンの場合、3年程度で新車価格の50%前後まで下落するケースが一般的です。
下記のグラフは、720Sの購入後10年間の中古車市場を表したものです。購入時(0年目)の価格を約4,500万円とした場合の減少率で、8年目以降は予想になっています。

0年目: 45,000,000円
3年目: 25,666,900円(約43%減)
5年目: 21,192,300円(約53%減)
7年目: 17,538,100円(約61%減)
10年目: 12,949,500円(約71%減)
2,500万円~3,500万円で中古車市場に出回る個体の買い取り予想額は1,750万円 ~ 2,800万円程度だと考えられます。
この違いの背景には以下の要因があります
- ブランドヘリテージ(歴史)の違い
- ディーラーネットワークの規模
- アフターサービスの充実度
- 中古車市場での需要の差
技術面での3つの課題
マクラーレンの車両は最新のテクノロジーを積極的に採用していますが、それゆえの課題も存在します。
車載システムの信頼性
最新モデルでも初期生産モデルでは、インフォテインメントシステムの不具合(フリーズやブラックアウト)や電装系のトラブルが報告されています。これらの問題は、ブランドイメージに少なからず影響を与えています。
部品供給の問題
特に古いモデルでは、部品の生産終了により入手が困難になるケースがあります。あまりにも早いモデルチェンジの影響でMP4-12Cなどの初期モデルではこの問題が顕著です。
アフターサービスの現状
認定サービスセンターの数が限られているため、整備や修理に時間がかかることがあります。また、技術者の育成も課題となっています。
メンテナンス面での課題でも書きましたが、比較的新しいメーカー故に扱ってくれる中古車ディーラーも少ないです。
オーナーが直面する現実
マクラーレンオーナーが直面する主な課題は以下の通りです。
維持費の実態
- 定期メンテナンス費用の高額化
- 予期せぬ修理費用のリスク
- 保険料の高騰
修理、整備時の待機期間
- 部品取り寄せの遅延
- 技術者の不足
- 修理、整備施設の限定
売却時の課題
- 買取価格の大幅な下落
- 市場での需要の不安定さ
- 売却先の限定(上記の2つが原因で毛嫌いしているところもある)
解決への道筋と今後の展望
マクラーレンも、これらの課題を認識し、改善に向けた取り組みを始めています。
ブランドの取り組み
- サービスネットワークの拡充
- 品質管理の強化
- 認定中古車プログラムの充実
改善が期待できる点
- 新世代モデルでの信頼性向上(期待したいけど期待しきれない…)
- 部品供給体制の整備
- テクニカルサポートの強化
投資対象としての可能性
特に限定モデルに関しては、将来的な価値上昇の可能性も考えられます。例えば、P1やセナといった特別なモデルは、すでに新車価格を上回る取引も見られています。フェラーリやランボルギーニに比べると、マクラーレンの中古車価格は上昇しているものの、まだ新車価格から見るとかなり低い水準にあります。
しかし、マクラーレンはスーパーカーの世界でも比較的新しいブランドであり、今後さらに人気が高まれば投資対象として魅力的になる可能性があります。
まとめ
マクラーレンは、技術力とパフォーマンスの面では世界最高峰のスーパーカーメーカーの一つです。しかし、リセールバリューの問題は購入を検討する上で重要な考慮点となります。
この課題を克服するためには、以下の点が重要でしょう
- より安定したモデルサイクルの確立
- アフターサービス体制の強化
- ブランド価値の更なる向上
- 品質管理・維持の徹底
マクラーレンが、これらの課題を一つずつ解決していくことで、リセールバリューの問題も改善されていくことが期待されます。スーパーカーとしての魅力は十分にあり、将来的な発展の可能性を秘めたブランドとして注目されています。